災害動物医療研究会の設立に際して

 

2014.7.3

災害動物医療研究会・設立趣意書

 

 わが国は世界有数の災害発生国であり、これまでの噴火災害や大震災の経験から、災害動物医療では短期間に多くの物資や従事者が必要となることが明らかです。阪神淡路大震災の場合、犬4,300頭、猫5,000頭が被災したと推定され(兵庫県保健環境部調べ)、施設に収容された動物は約1,500頭、また何らかの医療処置を受けた頭数は約8,000頭にのぼりました。さらに、動物救援活動に参加したボランティア総数は、延べ2万人を超えました。東日本大震災でも、さらに多くの動物が被災したと予想されますが、未だに正確なデータが集計されず、不明のままです。

 今後、発生が予測される首都直下型地震の被害想定(東京都、2012)によると、最悪のシナリオでは約300万人が被災し、全半壊世帯数は約30万世帯にのぼります。これは単純に計算すると阪神淡路大震災の約6倍の規模に相当します。また、その他の巨大地震や火山噴火をはじめとした自然災害だけでなく、船舶事故による海洋汚染、原子力災害やパンデミックなど、あらゆる災害に対応可能な動物医療体制を準備しておく必要があります。ところが、災害時に必要とされる動物医療支援体制等を研究した例はほとんどありません。一方、米国などの獣医大学や獣医師会では、災害獣医学の教育研究体制があり、現場で活躍する専門家の育成も行っています。災害における動物医療の役割とは、家庭動物や産業動物などの被災動物を対象とした救護活動はもとより、人と動物の共通感染症対策、食品及び環境衛生、公衆衛生、汚染物質対策、放浪動物や野生化家畜問題などに加え、災害救助に携わる動物や被災した飼い主のペットロスへのサポートなど、多岐にわたります。

 そこで、わが国でも災害獣医学や災害動物医療に関心を有する獣医師、動物看護師、大学等研究機関、行政、企業、動物関係民間団体の関係者の情報交流や研究発表の場を提供するために、災害動物医療研究会を設立したいと思います。そして、災害獣医学や災害動物医療体制を充実させることで、人と動物と環境の健康を維持する社会づくりに貢献したいと考えています。

 

目的を達成するためのおもな事業

(1)研究会の開催

 ・専門家の教育講演を中心とした定例研究会の開催(年4回を予定)

 ・関連学会および研究会におけるワークショップの開催

(2)共同研究プロジェクトの推進

 ・災害発生地域における事例研究

 ・米国等における災害獣医学および災害動物医療体制の研究

 ・自治体と連携した防災・減災に向けた研究

 ・人医療と連携した災害医学研究

 ・動物医療支援シミュレータの開発

 ・平時における動物飼育および動物医療体制の実態調査

(3)情報の発信

 ・研究成果を共有するための情報ツールの整備

 ・ホームページや出版物を通じた情報発信

(4)動物医療支援チームの育成

 ・獣医師会、獣医系大学等と連携した人材育成

 ・研究成果を反映した動物医療支援体制の整備

 

 

 

 

設立発起人

 羽山伸一(発起人代表、日本獣医生命科学大学 獣医学部・教授)

 田中亜紀(カリフォルニア大学、日本獣医生命科学大学・非常勤講師)

 藤本順介(東京都獣医師会)

 小野裕之(仙台市獣医師会)

 小此木正樹(群馬県獣医師会)

 船津敏弘(福岡県獣医師会)

 佐伯 潤(大阪府獣医師会)

 皆川康雄(野生動物救護獣医師協会・副会長)

 入交眞巳(日本獣医生命科学大学 獣医学部・講師)

 原田恭治(日本獣医生命科学大学 獣医学部・准教授)

研究会顧問

 藏内勇夫(日本獣医師会・会長)

 石田卓夫(日本臨床獣医学フォーラム・会長)

 細井戸大成(日本動物病院協会・会長)

 河又 淳(福島県獣医師会・東日本大震災被災動物救援対策委員長)

 布施 明(日本医科大学付属病院 救命救急科・准教授)

 新井敏郎(日本獣医生命科学大学 獣医学部・学部長、教授)

 

お問い合わせ先

災害動物医療研究会 事務局
〒180-8602
東京都武蔵野市境南町1-7-1
日本獣医生命科学大学
獣医学部 獣医学科
疾病予防獣医学部門
野生動物学分野 内
info@javdm.org